事業再構築補助金の実質的な後継制度として、「中小企業新事業進出補助金」の第2回公募が開始されました。本補助金は、既存事業とは異なる新市場・高付加価値事業への進出を目的とする中小企業に対し、最大9,000万円(賃上げ特例適用時)の補助金を提供するものです。
本コラムでは、公募スケジュール、補助上限額、採択に不可欠な必須要件、および効果的な活用戦略について、詳細に解説します。
1. 公募スケジュールおよび申請手続き
申請を検討される企業は、以下の公募期間および手続き期限を厳守する必要があります。なお、電子申請にはGビズIDプライムアカウントが必須であり、取得に時間を要するため早期の手配が求められます。
| 項目 | 日程 | 留意事項 |
|---|---|---|
| 公募期間(申請受付期間) | 2025年9月12日(金)~12月19日(金)18:00 | 締切厳守 |
| 申請受付開始 | 2025年11月10日(月) | |
| 採択結果公表(予定) | 2026年3月下旬頃 | |
| 交付決定(事業開始時期) | 2026年7月頃~11月頃 | 交付決定後に補助事業着手が可能 |
2. 補助上限額と補助率(従業員規模別)
本補助金の上限額は、企業の従業員数に基づき設定されています。特に、賃上げ要件を満たすことで大幅に補助上限が引き上げられる点が特徴です。
| 従業員数 | 通常の補助上限額 | 賃上げ特例適用時の上限額 |
|---|---|---|
| 20人以下 | 750万円~2,500万円 | 3,000万円 |
| 21~50人 | 750万円~4,000万円 | 5,000万円 |
| 51~100人 | 750万円~5,500万円 | 7,000万円 |
| 101人以上 | 750万円~7,000万円 | 9,000万円(最大) |
【分析】 賃上げ特例を利用するには、給与支給総額の年平均6.0%増など、高い賃上げ目標が求められます。計画の実現可能性を精査し、慎重に適用を判断する必要があります。
3. 採択のための必須要件(事業計画の論理構成)
本補助金の採択を受けるには、単なる設備投資ではなく、「新市場進出」と「生産性向上」の目標達成が論理的に説明された事業計画が必要です。以下の全ての要件を満たさなければなりません。
3-1. 新事業進出の定義充足
- 新事業進出指針に定める「新事業進出」の定義に該当すること。
- 製品等の新規性要件
- 市場の新規性要件
- 新事業売上高要件
3-2. 財務目標および賃上げ目標
| 分類 | 要件の詳細 | 達成目標 |
|---|---|---|
| 付加価値向上 | 事業終了後3~5年で付加価値額(または従業員一人当たり付加価値額)の年平均成長率を増加させること | 4.0%以上 |
| 賃上げ(総額) | 事業終了後3~5年で給与支給総額の年平均成長率を増加させること | 2.5%以上 |
| 最低賃金水準 | 毎年、事業所内最低賃金が地域別最低賃金より高い水準であること | +30円以上 |
3-3. 法的要件
- 次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を公表していること。
4. 補助対象経費と具体的な事業転換事例
4-1. 補助対象経費(事業実施に必要な投資)
| 項目 | 主な用途例 |
|---|---|
| 機械装置・システム構築費 | 新規事業専用の機械装置、計測機器、専用ソフトウェア・情報システムの購入・構築費 |
| 建物費 | 生産・加工・販売施設、作業場など、事業計画に不可欠な建物の建設・改修費(撤去費を含む) |
| 技術導入費/知財権等経費 | 知的財産権等の導入、特許出願のための弁理士費用など |
| 外注費/専門家経費 | 検査・加工・設計の外注、専門コンサルタントへの謝金など |
| 広告宣伝・販売促進費 | PR用ウェブサイト構築、展示会出展、ブランディングに係る経費 |
4-2. 新事業進出指針に合致する事業転換の事例
| 業種 | 既存事業の例 | 新規事業(転換・進出)の具体例 |
|---|---|---|
| 飲食業 | 喫茶店経営 | 飲食スペースを縮小し、高付加価値なコーヒー豆・焼き菓子のテイクアウト販売を新規開始 |
| 小売業 | 衣服販売業 | リアル店舗から、ネット販売・サブスク形式のサービス事業へ業態転換 |
| 製造業 | 航空機部品製造 | 高度な技術力を活かし、ロボット・医療機器部品の製造事業を新規に立上げ |
| 建設業 | 土木造成・造園 | 自社所有地を活用し、高収益が期待できるオートキャンプ場整備(観光事業に参入) |
| サービス業 | 高齢者向けデイサービス | 一部事業を譲渡後、病院向けの給食・事務等の受託サービスへ事業を多角化 |
5. 申請に必要な提出書類一覧
申請には、事業計画書のほか、企業の財務状況や体制を証明する複数の書類が求められます。書類の不備は不採択の主要因となるため、厳密な準備が必要です。
| 項目 | 概要と留意点 |
|---|---|
| 1. 事業計画書 | 電子申請システムに入力。審査の成否を分ける最重要書類。 |
| 2. 決算書(直近2期分) | 貸借対照表、損益計算書、製造原価報告書など。 |
| 3. 従業員数を示す書類 | 労働基準法に基づく労働者名簿の写し(申請時点)。 |
| 4. 収益事業を証明する書類 | 法人の場合:直近の確定申告書別表一など。 |
| 5. 賃上げ計画の表明書 | 設定した賃上げ目標を従業員等に表明したことを示す書類。 |
| 6. 金融機関による確認書 | 資金調達を行う場合に、金融機関から事業計画の確認を受けるために必要。 |
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