投稿日:2025年12月11日
事業系補助金
令和8年度(2026年度)の経済産業省概算要求が発表され、中小企業・小規模事業者向けの支援策の全体像が見えてきました。
中小企業対策費として1,378億円が計上され、前年度当初予算から大幅に増額されています。これは、米国関税や物価高騰、そして特に深刻な「人手不足」という三重苦に直面する中小企業を、国として強力に支えていく姿勢の表れです。
本記事では、中小企業庁が発表した「令和8年度 中小企業・小規模事業者・地域経済関係 概算要求等ポイント」の内容をもとに、令和8年度の支援策の主要な方向性、そして継続・強化される可能性が高い注目すべき補助金について詳しく解説します。
1. 令和8年度予算の全体像と重点課題
概算要求額とその背景
令和8年度予算の概算要求額は、中小企業・小規模事業者・地域経済関係として1,378億円となり、前年度当初予算(1,080億円)を約300億円上回る水準となりました。
この増額は、現在の厳しい経営環境に対する「危機感」の裏返しです。特に以下の課題への対応が強く打ち出されています。
- 価格転嫁対策と資金繰り支援: 物価高騰下での事業継続を可能にするための支援。
- 省力化投資と構造的賃上げの実現: 深刻な人手不足に対応し、持続的な賃上げを実現するための環境整備。
概算要求に示された主要な柱
概算要求は、以下の4つの重点分野に沿って具体的な施策の方向性を示しています。
1-1. 価格転嫁・資金繰り支援と取引適正化
適切な価格転嫁を促すため、「価格交渉促進月間」の実施や、中小受託取引適正化法(取適法)の執行を強化します。これにより、中小企業・小規模事業者の事業継続を資金繰りの側面からも強力にサポートします。
1-2. 構造的賃上げと生産性向上・成長支援
過去最高水準の賃上げ率が実現する中、この流れを持続させるために、中小企業・小規模事業者が生産性向上につながる設備投資や伴走支援を受けられるよう後押しします。また、「新規輸出1万者支援プログラム」をテコに、海外市場に挑戦する企業の支援や、売上高100億円以上への成長を目指す中堅・中小企業の成長を加速させます。
1-3. 事業承継・M&A等を通じた変革の促進
経営者の高齢化が地域経済の基盤を揺るがすリスクに対応するため、事業承継の円滑化が重要テーマです。事業承継やM&Aを契機として、企業が新たな変革に挑戦し、生産性向上と成長を実現できるよう支援を行います。
1-4. 小規模事業者の活性化と地域経済への貢献
多様な経営課題を抱える小規模事業者にきめ細かな支援を推進します。さらに、地域社会の抱える課題(社会課題)の解決に向けた取り組みや、災害発生時の復旧・復興への取り組みを支援し、地域経済のレジリエンス(強靭性)を高めます。
2. 令和8年度以降に継続・強化される注目の補助金
上記の重点課題(価格転嫁、資金繰り、省力化、賃上げ)に対応するため、既存の主力補助金制度は、生産性向上と競争力強化を目指す形で継続・再編される見込みです。
特に注目すべき、令和6年度補正予算や令和8年度概算要求で言及されている補助金と、その役割をまとめました。
| 事業名 | 予算額 | 概要・補足 |
| 省力化投資補助金 | 令和6年度補正予算:既存基金の内数(3,000億円規模) | オーダーメイド形式を含む省力化投資を支援。カタログ形式の運用改善も行い、全方位型の支援に再編。 |
| 中堅・中小大規模成長投資補助金 | 令和6年度補正予算:1,400億円 ※国庫債務負担含め3,000億円 令和8年度(要求):60億円(8.7億円) | 人手不足等の課題に対応した、工場の新設や大規模な設備投資を支援。地域雇用を支える中堅・中小企業の成長投資を後押し。 |
| 成長加速化補助金 ものづくり補助金 IT導入補助金 小規模事業者持続化補助金 事業承継・M&A補助金 | 令和6年度補正予算:3,400億円 | 中小企業の成長段階に応じた戦略的投資を支援。/製造業等の設備投資を通じた生産性向上を支援。/ITツール導入による業務効率化・DXを推進。/小規模事業者の販路開拓や生産性向上を支援。/事業承継やM&Aの円滑化に向けた取組を支援。 |
| 新事業進出補助金 | 令和6年度補正予算:既存基金の内数(1,500億円規模) | 新市場・高付加価値事業への前向きな挑戦を後押し。中小企業等の企業規模の拡大・付加価値向上を通じた生産性向上を図る。 |
※予算額は概算要求時点での情報であり、今後変更となる可能性があります。
まとめ:補助金活用で「構造的賃上げ」と「人手不足解消」へ
本記事では、令和8年度経済産業省概算要求の主要なテーマと、それに伴う中小企業向け補助金の方向性について解説しました。
令和8年度の予算のテーマは、まさに「厳しい環境下での事業継続」と「持続的な成長に向けた変革」です。特に、人手不足対策としての省力化投資と、それを土台とした構造的賃上げの実現が最大の焦点となるでしょう。
これらの補助金は、企業の競争力強化と賃金底上げを目指す上で非常に強力なツールとなります。各補助金の目的と申請のポイントをしっかりと押さえ、自社に最適な補助金を見つけることが、来年度の成長戦略を左右します。
補助金申請は複雑で時間のかかる作業ですが、適切な準備と専門家のサポートを受けることで、成功率を大きく高めることができます。
サポート行政書士法人では、経験豊富な専門家が各種補助金の申請支援を行っております。補助金申請に関する無料相談も受け付けておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。
