千葉県の飲食店「食事処すこや」(仮称)。
常陸牛の豪快な鉄板焼きが売りで、他にも和・洋・中の料理を手広く提供していました。
近くのオフィス・工場で働く人や、家族連れのお客様など、地元の人を中心に繁盛していて、
店内営業の他にも地元の企業向けに仕出し弁当のサービスをしたり、ケータリングをしたり、
オーナーの広瀬さん(仮名)は様々なサービスに好奇心をもって取り組んでいました。
そんな食事処すこやですが、他の多くの飲食店の例に漏れず、このお店もコロナ禍の影響を受けました。
テレワーク化が進み、近くで働く人の来店は減り、仕出し弁当の売上も減りました。家族連れも減りました。
移動販売を利用する人も減りました。営業時間短縮の影響も受けました。
これはいけないと思った広瀬さんは、銀行から融資を受けることにしました。
広瀬さんにとって融資の使い道は、赤字を補填することではなく、
新事業を立ち上げることでした。融資はいずれ返さなくてはいけないのだから、
前に戻すだけではダメで、前より良くする必要があると考えたのです。
広瀬さんは情報を集め、試せることを色々試しました。
新事業として、道の駅でピザを販売したり、地元の高校でクレープの移動販売をしたりしました。
また、ネットで調べた情報を元に、「これは!」と思った企業に電話して、相談もしました。
そうした情報収集の一貫で、広瀬さんは事業再構築補助金のことを知り、サポート行政書士法人(弊社のこと、以下SG)のことも知りました。
SGに持ちかけた時、広瀬さんはすでに3つの新事業のアイデアがありました。
1つ目は自動販売機でのクレープ販売です。飲食店向きの新事業として自動販売機の展開があることを知った広瀬さんは、
自動販売機の設置業者を調べて連絡を取りました。
「何を自販機で売るのが儲かるでしょうか?」と直接聞いて、
「クレープなんかが良く売れる」と回答された広瀬さん。
ちょうどクレープ販売はやっていたのもあり、
手作りクレープを真空パックして自販機で売る事業は自分でも出来るな、と思いました。
2つ目はキッチンカーでの移動販売です。
もともとケータリングなどの移動販売のノウハウはあったため、
キッチンカーさえ入手出来ればなんとかなると思いました。
3つ目は冷凍ピザの販売です。
補助金の利用を考える前から始めていた道の駅でのピザ販売。
これをECサイトで販売するなどして、より沢山のピザを売れるのではないかと考えつきました。
広瀬さんは、補助金の採択が通らなくても、これらの新事業を自腹で始めるつもりでした。
先ほども書いたように、融資を受けた以上何か新しいことをしないといけないと思っていたからです。
しかし、必要な経費は中々に多いです。例えばキッチンカーの場合、
軽トラの新車を購入した上で(※補助金が通った場合も車の購入費用は対象経費外です)、
それをキッチンカーに改装するお金も自腹になります(改装は対象経費内です)。
クレープの自動販売機も、機械の購入・設置費用に真空パック用の道具の購入が必要です。
また、これらの事業を新しく始めるにあたり、食事処すこやのHPの改装も制作会社に依頼する必要があります。
これらの経費を自腹で払うことになるか、補助金の交付を糧にすることが出来るか。
広瀬さんはSGと一緒に事業計画をより具体的にし、事業計画書を作成しました。
広瀬さんの豊富なアイデアを計画書に落とし込むことが出来て、めでたく採択が降りました。
採択後の交付申請と並行して、広瀬さんはクレープの自販機での販売から着手しました。
自販機の売上は順調で、今では1日中補充用のクレープの調理に追われているのが悩みの種です。
ピザのECサイトでの販売も合わせ、現在では売上がコロナ前の7割ほどにまで戻っています。
軽トラの改装も終え、キッチンカーでの販売も動きはじめました。
また、12月からは様子を見ながら店内営業の方も予約制で再開していく予定です。
これらも含めると、売上はコロナ前の売上5000万円に比べて1000万円増を見込んでおり、
融資も返すことができそうです。
こうして新事業が軌道に乗り始めた広瀬さん。しかし、広瀬さんはさらに先を見据えています。
クレープ調理に追われるというのは、もちろん仕事が無いことに比べれば嬉しい悲鳴ですが、
従業員数を増やすことで行く行くは広瀬さん自身が現場に出なくても回るようにしたいです。
また、冷凍ピザのECサイトでの販売も競合相手が多いため、
地元の飲食店に卸すなど、よりターゲットを絞った販路も考えています。
軌道に乗った後も挑戦を続ける行動力とアイデア力をもっていたからこそ、
広瀬さんはコロナ禍を乗り越えることが出来たのかもしれませんね。