展示会ブース施工会社AGAIN(小規模事業者持続化補助金 事例紹介)

 平成25年に創業したAGAIN(仮称)。この会社は、リフォーム会社やデザイン会社の代理店から依頼を受けて、住宅や事務所のモデルルーム・ブースサンプルを制作し、展示会に出展するサービスを手掛ける会社です。
 
 高い技術力を誇る経験豊富な現場職人が多数在籍しており、更に自社工場もあるため、自社のリソースだけであらゆる要望に柔軟に対応できることが強みです。
展示会は毎週あり、様々なモデルルームを制作できるため、社員は常に新鮮な気持ちで働けていました。
14人という少ない従業員数ながら、2019年上半期は約2億円を売り上げ、経営も安定していました。


 

 しかし2020年の春以降、新型コロナの打撃がAGAINにも及びました。展示会が相次いで中止されたため、仕事の件数は9割減。なんとか仕事を手にしようと営業活動を強化したものの、新しい案件は一向に獲得できません。建物のオーナー・依頼先からの要望で、制作現場への社員の出社も自粛せざるを得なくなりました。
 結果、2020年上半期の売上は1000万円ほど。1年で売上が1/20にまで落ち込みました。銀行から融資を受けることは出来たものの、仕事がなくなっている以上、根本的な解決にはなりません。

 これからどうしようかと途方に暮れていたところ、「小規模事業者持続化補助金」の話を同業経営者から聞きつけました。この補助金を使って現状を打開できないか考え、補助金申請のサポートをしてくれる会社を探した結果、以前からお世話になっていた社労士さんからの紹介で、SGを知って、相談することにしました。


 相談を通して、AGAINの代表の山田さん(仮名)は、この補助金が「オンライン展示会への出展」に使えることに気が付きました。オンライン展示会とは、現実のブースに来てもらうのではなく、主にCGとして制作したモデルルームをお客様にオンラインで見てもらう展示会のことで、ウィズコロナ・アフターコロナの展示会スタイルとして一気に注目を集めたものです。

 実は、SGに相談する前からAGAINはオンライン展示会の存在を知っていました。オンライン展示会に出展しないかという案内も既に来てはいたのですが、完全な新規事業ということもあって尻込みしていました。SGへの相談前は、新しい事業を軌道に載せる具体的なイメージができずにいましたが、事前相談の段階から一緒に事業計画や申請内容を考える中で、頑張れば実現できるのではないかと思えてきました。
 既存の仕事が激減した今、何か新しい手を打ちたいと思っていたこともあり、補助金を初期投資としてオンライン展示会への出展事業を始めることにしました。時代の流れに乗るなら今しかないと思ったのです。


 SGが成功報酬であること、依頼金額が明確だったこと、初期対応が親切だったこともあり、山田さんは正式にSGに申請サポートを依頼することにしました。
 その後、本格的に事業計画づくりが始まりました。SGと一緒に事業計画や申請内容(業務フロー、実現性、需要についてなど)を考える中で、ウィズコロナ・アフターコロナでのオンライン展示会の需要が当初思っていた以上に高そうだということも分かってきました。

 また、担当者と二人三脚で、事業の流れや売上計画など具体的なイメージを膨らませていきました。リアルのモデルルーム・ブースサンプルを制作するAGAINが、CGブースを主体とするオンライン展示会にどうやって参入していくのか。そこでは、AGAINが持っていた強み、「自社のリソースだけであらゆる要望に柔軟に対応できる」という強みが最大限に活かされました。
 
 AGAINが計画した事業は主に2種類、「動画による出展」と「動画をサンプルとしたCGブースの外注」です。
 「動画による出展」とは、自社工場内にブースを自由に制作し、制作したブースを動画撮影することで、動画をサンプルとしてオンライン展示会に公開することです。実物でのブース制作によって、CGよりもリアルで立体感のあるブースサンプルを提案することができます。また、複数のブースの同時製作や小道具の制作も自社で一貫して行えるため、多様て高クオリティなブースサンプルをスピーディに提案することができます。
 また、実物のブースの撮影動画を元にしたCGブースの制作を外注することで、よりリアルなCGブースを制作することも可能になります。


 こうして自身の強みを活かした独自の事業計画が出来上がっていき、オンライン展示会への期待もどんどん膨らんでいきました。
 しかし、採択されなければ補助金はもちろん下りません。どちらにせよオンライン展示会には進出しようと思っていましたが、ただでさえ売上が激減しているなか、追加の出費はできるだけ避けたいところ。申請後も採択結果が発表されるまでは毎日ヤキモキしていました。
 

 そして、採択結果発表の日。SGの担当者から電話で採択の一報があったとき、ほっとしました。既存事業と新事業の二本柱になるため、会社経営の安定性は一気に増していくでしょう。そのことへの安心感が芽生えると同時に、これを好機として時代の流れに乗って一層成長していくぞ!という意気込みがますます高まりました。新たに従業員も雇いました。

 採択後は交付決定を経て新事業に本格的に着手し、新たな一歩を実現することが出来ました。一方、今後どこまでデジタル化が進むのかといった展望は読みにくい部分もあります。
 
 アフターコロナの時代にリモート化やソーシャルディスタンスの風潮がなくなれば、リアルでの展示会に需要が戻っていくこともあるかもしれません。それでも、コロナ禍という未曽有の危機を、新しい事業への進出という好機に変えて乗り越えることができたのは、会社にとっても山田さんにとっても幸運でした。社員やお客さんも、オンライン展示会という新しい試みに対し、戸惑いもありましたがそれ以上にワクワクした気持ちがありました。
 

 そんな今、リアルでの展示会も少しずつ戻ってきています。今後、AGAINはリアルの展示会を主軸にし、元々自分たちの持っている強みが最大限発揮しながら、オプションとしてCGブースの仕事を続けるのも面白いと感じています。